この記事は、物語終盤・エンディングまでのネタバレを含みます。
子どもの頃にWiiで遊んだ『スーパーペーパーマリオ』。今でも、この作品はストーリーが強く記憶に残っています。
ペラペラのマリオが、世界の見方を変えながら冒険するゲーム。でも、最後まで遊び終えたときに残ったのは、アクションの面白さだけではありませんでした。
世界を滅ぼそうとするノワール伯爵と、マリオを案内するアンナ。
この物語の中心は、実はこの2人だった。
私は、そんなふうに感じました。
もちろん、冒険を進める主人公はマリオたちです。それでも、最後に物語の見え方を変えるのは、ノワール伯爵ことルミエールと、アンナことエマの過去でした。
今回は、その流れをあらためて振り返ります。私にとって、マリオシリーズの中でも屈指のボリューム感と深さがあった作品です。
ピーチ姫を助ける冒険が、世界の滅びを止める旅になる
物語の入口には、おなじみのマリオらしい状況があります。ピーチ姫がさらわれ、マリオとルイージがクッパ城へ向かう。
ところが、今回の犯人はクッパではありません。現れたのはノワール伯爵です。クッパやルイージたちまで異空間へ連れ去られ、残されたマリオは、不思議なチョウチョのアンナに導かれて異次元の街へ向かいます。任天堂の作品紹介
その一方で、伯爵はピーチとクッパの結婚式を強行します。そこから生まれるのが「コントンのラブパワー」です。任天堂のストーリー紹介
姫を助ければ終わる話ではありません。マリオたちは、世界の破滅を防ぐために、8つのピュアハートを探すことになります。
しかも、その旅にはピーチやクッパ、ルイージも加わる。いつもの顔ぶれがそろっているのに、目指しているものも、敵と味方の並び方も少し違います。
このおなじみの雰囲気と、物語が進む方向の違いが、本作の面白いところだと思います。
「世界が滅ぶ」が、本当に目の前で起きる
世界の危機を描くゲームは珍しくありません。ただ、本作ではその危機を、言葉だけで済ませません。
ステージ6のモノノフ王国では、冒険の途中で世界そのものが消滅します。再び訪れた先に広がるのは、ほとんど何もない白い空間です。
それまで人がいて、戦いがあって、先へ進む道があった場所がなくなる。
今振り返ると、この場面があることで、ノワール伯爵の行動を「大げさな悪役の宣言」として受け流せなくなるのだと思います。
この先、本当にほかの世界もこうなってしまう。
そう読める場面を、マリオたちが歩く場所そのものの変化で見せている。私は、ここに本作の物語の重さが表れていると感じます。
死者の国とラブエルの話まで続いていく
さらに物語は、死者の国アンダーランドや、スカイランドへと進みます。
そこで登場するラブエルは、最後のピュアハートが姿を変えた存在でした。育ての親であるグランエルとジャーデスの思いを知り、別れを経てピュアハートに戻ります。
世界を救うための大事なアイテムを手に入れる。その過程に、家族として過ごしてきた時間と別れがある。
こういう話が入ってくると、ピュアハートの数が増えることも、単純に冒険が進んだというだけには見えなくなります。
なお、ラブエルはクリア後に再び姿を見せます。その理由は作中で明確に説明されていないため、ここを取り返しのつかない死として断定するのも違います。
喪失を描きながら、その先に再生の余地も残している。このあたりも、今あらためて振り返りたくなる部分です。
冒険の合間に、もう一つの物語が進んでいた
その一方で、本作には、マリオたちの冒険とは違う形で語られる話があります。
ステージを終えるたびに少しずつ挟まれる、ルミエールとエマの過去です。
出会い、相手に会いたいという気持ち、引き離そうとする力。そして、2人で幸せになれる場所を探そうとする約束。
最初から現在の登場人物との関係をすべて説明するのではなく、文字による場面を重ねて、少しずつ見せていきます。
私にとって、この少しずつ明かされる構成が印象的でした。
マリオが進む冒険と、別のところで語られる2人の話。最初は離れて見えたものが、だんだん同じ物語の中でつながっていく。
後から正体を知ったとき、過去の場面まで意味が変わる作りになっています。
そもそも冒頭の語りから、本作は黒のヨゲン書の最後の持ち主にまつわる、愛の物語として始まっています。最後まで知ると、その入口にも戻って考えたくなります。
ルミエールとエマは、なぜ引き離されたのか
ルミエールはヤミの一族、エマは人間です。
2人の出会いは、傷ついて倒れていたルミエールを、エマが助けたことから始まります。相手の種族ではなく、目の前で傷ついている人を助ける。そこから2人は心を通わせていきます。
しかし、ルミエールの父親は、その関係を認めませんでした。エマは父親によってルミエールのいる世界から引き離され、ルミエールは彼女を探すことになります。
ここで私が重要だと思うのは、2人の気持ちが冷めて別れた話ではないことです。
一緒にいたい。けれど、一緒にいることを認めてもらえない。
その別離が、後の世界の危機にまでつながってしまう。大きな冒険の根元に、とても個人的な関係があるのです。
エマを見つけられなかったルミエールは、ノワール伯爵になる
エマを探しても、見つからない。
彼女のいない世界に意味を見いだせなくなったルミエールは、黒のヨゲン書に手を伸ばします。そして、ノワール伯爵として世界の破滅を進める存在になります。
この過去を知ると、伯爵の見え方は変わります。
ただし、私は、悲しい事情があったから彼のしたことが許される、という話にはしたくありません。モノノフ王国の消滅は実際に起きているし、マリオたちが止めなければならない危機も変わりません。
それでも、なぜそこまでして世界を滅ぼそうとしたのかが分かると、ただ倒せばすべて片づく悪役には見えなくなる。
行動は止めなければならない。でも、そこに至るまでの話を知ってしまった。
私が本作を単純な勧善懲悪ではないと感じるのは、こういうところです。
エマは、マリオを案内するアンナになっていた
一方、エマは完全に失われていたわけではありませんでした。
瀕死の状態でハザマタウンに流れ着いた彼女を救ったのが、デアールです。その命を救うためにフェアリンの姿へ変えられたのが、アンナでした。彼女は過去の記憶を失った状態で、マリオの旅に同行します。
アンナは、最初からすべてを知ってマリオを導いていたわけではありません。
冒険の中で記憶を取り戻し、ノワール伯爵の言葉に反応する。かつての自分と、今の自分が少しずつつながっていきます。
世界を滅ぼそうとする敵と、それを止める旅の案内役。
その2人が、かつて一緒に生きようと約束した相手だった。
この関係が見えてくると、目の前の冒険が、長い別離の先にある再会の話としても読めるようになります。
伯爵を倒しても、物語は終わらない
終盤、マリオたちはノワール伯爵を倒します。
しかし、そこで待っていたのは、部下だったディメーンの裏切りでした。ディメーンはルイージとコントンのラブパワーを取り込み、スーパーディメーンとなります。
ここでマリオたちを再び支えるのが、アンナや伯爵の仲間たちの思いによって力を取り戻したピュアハートです。
私は、この場面を2人の恋愛だけで説明しきらないところも好きです。
伯爵には、彼を思って動く仲間がいる。失った相手だけがすべてだった彼の周囲に、それでも別のつながりが残っている。
ルミエールとエマを中心に振り返ると、つい2人だけの話にしたくなります。でも、世界を救う道をつなぐのは、マリオたちの戦いであり、伯爵の仲間たちの思いでもあるのだと思います。
最後に必要だったのは、2人がもう一度未来を選ぶことだった
スーパーディメーンを倒しても、世界の崩壊はまだ止まりません。
最後にルミエールとエマは結婚式の場で愛を誓い、その愛とピュアハートの力でコントンのラブパワーを消し去ります。世界は救われ、2人は姿を消します。
冒頭には、ピーチとクッパに強いられた結婚式がありました。
結末には、長く引き離されていた2人が、自分たちの意思で愛を誓う場面がある。
この始まりと終わりの対応が、私はとても印象的だと思います。
相手を失った絶望が、世界を滅ぼす方向へ向かったルミエール。その彼が、再会したエマとともに、今度は世界を救う側へ向かう。
最後の敵に勝った後まで、この2人の選択が必要だった。だから私は、遊び終えたときに「この物語の中心は2人だったのではないか」と感じたのだと思います。
最後のシルエットが、2人の物語を閉じきらない
エンディングでは、残されたナスタシアたちにも、それぞれの受け止め方があります。ナスタシアは、2人が幸せになったと信じています。
そして、クリア後には、ルミエールとエマを思わせる2人のシルエットが描かれます。
ただし、これだけで、2人がどこへ行き、どのような状態で暮らしているのかまで確定するわけではありません。
私の記憶に残っているのも、この余韻です。
世界は救われた。けれど、2人のその後は、すべてを言葉で説明されない。
だからこそ、あのシルエットに、それまでの約束を重ねて見たくなるのだと思います。
「幸せになれる場所を、今度こそ見つけられたのかもしれない」
それは確定した設定というより、私が最後の場面から受け取りたくなるものです。
マリオの冒険として遊んで、2人の物語が残った
今振り返ると、私が感じたボリューム感は、単に冒険の舞台が多いからではなかったのだと思います。
世界の消滅が描かれ、家族の別れがあり、敵だった人物の過去が分かる。そして、旅の相棒だったアンナ自身の物語へとつながっていく。
先へ進むほど、すでに知っていた登場人物や出来事の意味まで変わる。その積み重なりが、物語を大きく感じさせたのだと思います。
マリオたちが冒険を進め、世界を救う。その面白さは、もちろんあります。
そのうえで私の心に強く残ったのは、ルミエールとエマの2人でした。
マリオの冒険として遊び始めた物語が、最後には、長く引き離された2人の物語としても残る。
だから『スーパーペーパーマリオ』は、大人になった今も振り返りたくなる作品です。


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