仕事でも日常の会話でも、自分なりに考えて答えたのに、
「いや、そうじゃないんだよ」
と言われることがあります。
この言葉を言われると、けっこう止まります。
自分の答えが間違っていたのか。
考え方が浅かったのか。
相手の意図を読み取れていなかったのか。
そう感じて、少し落ち込むこともあります。
もちろん、本当に答えが間違っている場合もあります。
情報を勘違いしていたり、質問の意味を取り違えていたり、論理が崩れていたりすることもある。
でも最近思うのは、「そうじゃない」と言われる原因は、答えそのものではなく、思考の出発点が違っていることも多いということです。
自分の中では筋が通っている。
でも、相手が求めていた前提とはズレていた。
そういうことは、仕事の中で案外よくある気がします。
自分の中では筋が通っているのに、相手にはズレて見える
自分なりには、ちゃんと考えている。
Aという状況があって、Bという理由がある。
だからCという答えを出した。
自分の中では、かなり自然な流れです。
でも、相手が見ている出発点が違うと、その答えは急にズレて見えます。
たとえば、自分は「どうすれば早く終わるか」を考えて答えている。
でも相手は「そもそも何を優先すべきか」を聞いている。
この場合、こちらの答えが完全に間違っているわけではありません。
「早く終わらせる」という文脈では、ちゃんと筋が通っているかもしれない。
ただ、相手が求めていたのは、スピードの話ではなく、優先順位の話だった。
だから相手からすると、
「そうじゃないんだよ」
になる。
このズレは、能力や理解力だけの問題ではなく、どこから考え始めたかの違いでもあると思います。
ロジカルに考えていても、前提が違えば答えは変わる
「ロジカルに考える」と聞くと、正しい順番で考えれば正しい答えに近づけるような気がします。
もちろん、論理的に考えることは大事です。
ただ、どれだけロジカルに考えていても、最初の前提が違っていれば、たどり着く答えも変わります。
たとえば、同じ「この資料を直しておいて」という言葉でも、受け取り方はいくつかあります。
| 自分が置いた前提 | 出てくる答え |
|---|---|
| 見た目を整えることが目的 | レイアウトや表現を直す |
| 内容の正確性が目的 | 数字や根拠を確認する |
| 上司への説明が目的 | 結論やストーリーを整理する |
| お客様に出すことが目的 | 誤解がない表現に整える |
どれも「資料を直す」という行動ではあります。
でも、前提が違えば、直す場所も変わります。
自分は見た目を整えるつもりで作業した。
でも相手は、説明の流れを直してほしかった。
このとき、自分の作業がまったく無意味だったわけではありません。
ただ、相手が期待していた作業とは違っていた。
だから「そうじゃない」と言われる。
ここで大事なのは、自分の答えが全部ダメだったと決めつけないことだと思います。
自分の文脈では、ちゃんと合っていたかもしれない。
ただ、相手の文脈とは違っていた。
仕事でうまくいかなかったときに、すべてを自分のせいにしすぎない考え方については、こちらの記事でも書いています。
「この件どう思う?」にも、いくつもの前提がある
仕事でよくあるのが、上司や先輩から、
「この件、どう思う?」
と聞かれる場面です。
この聞き方はシンプルですが、実はかなり幅があります。
自分は「賛成か反対か」を聞かれていると思って、答えを考える。
「私は進めてもいいと思います」
「少し慎重に見たほうがいいと思います」
こんなふうに、自分なりの意見を返す。
でも、相手が本当に聞きたかったのは、賛成・反対ではなかったかもしれません。
- 進める場合のリスクは何か
- お客様からどう見えるか
- 今やるべきか、後に回すべきか
- チームとして優先すべきか
- 判断するために足りない情報は何か
こういう判断材料を整理してほしかった可能性もあります。
この場合、自分の答えが完全に間違っているわけではありません。
「賛成か反対か」という前提で考えれば、ちゃんと答えている。
ただ、相手は「判断材料を整理してほしい」という前提で聞いていた。
だから、会話がズレる。
「この件どう思う?」という短い質問でも、相手が求めているものは一つではありません。
意見がほしいのか。
リスクを見てほしいのか。
優先順位を考えてほしいのか。
次に何をするべきかを整理してほしいのか。
ここを確認しないまま答えると、自分ではちゃんと考えたつもりでも、相手には「そうじゃない」と見えてしまうことがあります。
考える出発点を整理するという意味では、「現在」と「未来」を行き来して考える視点にも近いかもしれません。
結論ファーストが、ズレを早めることもある
最近は、仕事でも「結論から話す」ことが大事だと言われます。
これはたしかに分かります。
忙しい相手に話すとき、前置きが長すぎると伝わりにくい。
最初に結論を言うことで、話の方向が分かりやすくなる。
ただ一方で、結論ファーストには少し難しさもあると思っています。
それは、結論を言った瞬間に、相手が自分の想定とは違うストーリーで受け取ってしまうことがあるという点です。
本当は、
「こういう前提で考えると、この結論になります」
と伝えたかった。
でも、先に結論だけを出すと、相手はその結論を見て、
「いや、その話じゃない」
「そこを聞きたいわけじゃない」
「その方向に進めたいわけじゃない」
と感じることがあります。
結論だけを見るとズレている。
でも、その前に置いていた前提まで説明すれば、少なくとも「なぜその答えになったのか」は伝わる。
ここが難しいところです。
結論ファーストは大事。
でも、前提を共有しないまま結論だけを出すと、ズレが大きく見えることがある。
相手に伝わる話し方については、「1人に伝える」という考え方でも整理しています。
人に伝えるって難しい。社会人になって感じたコミュニケーションのあれこれ
先に前提をひと言置くだけで、伝わり方は変わる
では、どうすればいいのか。
大きなテクニックが必要というより、私は結論の前後に短く前提を置くだけでも変わると思っています。
たとえば、いきなり、
「A案がいいと思います」
と言うのではなく、
「スピードを優先するなら、A案がいいと思います」
と言う。
または、
「費用を抑える前提なら、B案が現実的だと思います」
と言う。
このひと言があるだけで、相手は判断しやすくなります。
| 言い方 | 伝わり方 |
|---|---|
| A案がいいと思います | なぜA案なのか分かりにくい |
| スピードを優先するならA案がいいと思います | 判断基準が分かる |
| B案は微妙です | 何が微妙なのか分かりにくい |
| 今回の目的が品質ならB案は少し弱いです | 前提と理由がつながる |
結論を遅らせる必要はありません。
ただ、結論の前か後ろに、短く「どの前提で考えたか」を添える。
それだけで、相手は、
「その前提なら分かる」
「今回は別の観点で考えたい」
「そこではなく、リスクを見てほしかった」
と返しやすくなります。
つまり、前提を添えることは、自分の答えを正当化するためではありません。
相手と同じ場所から考え始めるための準備なのだと思います。
「そうじゃない」は、自分を否定された言葉とは限らない
「そうじゃない」と言われると、どうしても否定されたように感じます。
自分の考え方が悪かったのか。
もっと違う答えを出せばよかったのか。
何も分かっていないと思われたのではないか。
そんなふうに考えてしまうこともあります。
でも、少し落ち着いて考えると、それは自分の考えが全部間違っていたという意味ではないのかもしれません。
相手が見ていたもの。
自分が見ていたもの。
優先していたもの。
判断の出発点。
そのどこかがズレていた。
そう捉え直すだけで、次に確認すべきことが見えてきます。
「今回は何を一番優先して考えればいいですか?」
「この話は、スピード重視ですか?品質重視ですか?」
「今聞かれているのは、結論ですか?進め方ですか?」
「判断材料を整理したほうがいいですか?」
こう聞けると、会話は少し進めやすくなります。
自分の答えを守るためではなく、相手と同じ場所から考え始めるために確認する。
その感覚があるだけで、「そうじゃない」という言葉の受け止め方も少し変わる気がします。
まとめ:答えが違う前に、前提が違うのかもしれない
「そうじゃない」と言われたとき、すぐに自分の答えが間違っていたと決めつけなくてもいい。
もちろん、間違いは直す必要があります。
でも同時に、自分の答えは自分の文脈では合っていたけれど、相手の求める前提とは違っていたという場合もあります。
ロジカルに考えることは大事です。
ただ、そのロジックがどこから始まっているのか。
相手も同じ出発点に立っているのか。
そこがズレていると、答えだけを見ても噛み合いません。
結論ファーストが大事な場面だからこそ、結論の前後にひと言だけ前提を添える。
「スピードを優先するなら」
「費用を抑えるなら」
「今回の目的が品質なら」
「相手に説明しやすくするなら」
こうした小さな前提の共有が、会話のズレを減らしてくれるのだと思います。
「そうじゃない」と言われたときは、答えだけではなく、考え始めた場所を見直してみる。
それだけで、少し次の会話がしやすくなる気がします。
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